
清明節は中国でお墓参りをする日|由来や習慣を紹介
この記事でわかること
- 中国の清明節(せいめいせつ)は毎年4月4~6日頃で、お墓参りをする。
- 「清明」は草木が芽吹き、生命力があふれ始める春らしい言葉。
- 清明節はお墓参り以外に、草餅、野山の散策、凧揚げ、柳の葉など、伝統的な習慣がある。
清明節(せいめいせつ)は、中国で春の訪れを感じる大切な行事です。
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、清明節は先祖をしのぶ厳かな日であると同時に、春の自然を楽しむ明るい日でもあります。
お墓参りで家族の絆を確かめ、そのあとに野山へ出かけて散策を楽しむ。

一見すると「追悼」と「行楽」が同じ日に行われる不思議な文化ですが、そこには中国の長い歴史と、人々が大切にしてきた「命のつながり」への想いが込められています。
この記事では、清明節の意味・歴史・伝統行事・中国語表現をやさしく解説します。
中国の文化への理解を深めましょう。
目次
清明節ってどんな日?


清明節(せいめいせつ)は、中国でとても大切にされている春の伝統行事です。
先祖を敬うとともに、春の訪れを祝い、自然を楽しみます。
日本のお彼岸とお花見が一緒になったような、やさしく温かい雰囲気があります。
清明節の時期:毎年4月4~6日ごろ
清明節は、毎年4月4〜6日ごろです。
二十四節気の「清明」の日に合わせて決められており、太陽の動きによって毎年少しだけ日付が変わります。
中科院紫金山天文台の観測によると、2026年は4月5日午前2時39分が正確な時間だそうです。
中国では2008年から清明節が法定休日として定められ、2025年、2026年ともに4月4日〜6日が3連休です。



多くの人がこの日を利用して故郷へ帰り、家族そろってお墓参りをします。
清明節の意味:先祖を敬う+春を祝う日
清明節には、2つの大切な意味があります。
- 亡くなった家族や先祖に感謝する日(追悼)
- 春の生命力を感じ、自然を楽しむ日(春の行楽)
追悼と行楽という、一見対照的に見える2つの行為が同じ日に行われるのが清明節の特徴です。
先祖を敬いつつ、「今年も元気に暮らしていこう」と春を喜ぶ、そんな前向きな気持ちが込められた行事なのです。
清明節の歴史をやさしく解説


清明節は、二千年以上の歴史をもつ中国の伝統行事で、自然の節目と先祖を大切にする文化が重なって生まれた節日です。
その成り立ちを少し見てみましょう。
歴史(1)もとは二十四節気「清明」から生まれた節日
清明節の起源は、農耕社会の中国が大切にしてきた二十四節気の「清明」にさかのぼります。
「清明」とは:
- 空気が澄み
- 草木が芽吹き
- 生命力があふれ始める
そんな春らしい季節を表す言葉です。
古代の人々は、この時期を「農作業を始めるのに最適な日」と考え、自然の恵みに感謝する春の祭りを行っていました。



つまり、清明節のルーツには自然への祈りがあったのです。
歴史(2)寒食節と結びついて、今の形へ発展
清明節の歴史を語るうえで欠かせないのが「寒食節」です。
古代中国では「同じ火を使い続けると生命力が衰え、災いを招く」と考えられており、季節の変わり目に「古い火を消し、新たに火を起こす」儀式が行われていました。
儀式の間は火を使えず、人々は前もって用意した冷たい食事をとらざるを得ませんでした。
この風習に、主君を救うために焼死したと伝えられる忠臣・介之推をしのぶ伝説が結びつき、行事としての意味が深まっていきます。
唐代以降、春の到来を告げる「清明」と、追悼の行事である「寒食節」が次第に融合し、現在の清明節の原型が形作られました。
宋代には墓参りと春の行楽を中心とする習俗がほぼ完成し、明・清時代を通じて中国社会に定着していったのです。
清明節に行われる中国独特の習慣


中国の伝統祭日の1つ「清明節」は、上述の通り「追悼」と「行楽」の二面性を持ち合わせています。
それでは、具体的に何をするのか、中国独特の習慣を見ていきましょう。
習慣(1)先祖を追悼するお墓参り「掃墓」
墓参りや祖先祭祀を行う、清明節の最も重要な儀式です。
中国語では「扫墓(sǎomù)」と言います。


- 墓の清掃と整理:
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雑草を取り除き、墓石を清掃し、周辺をきれいにします。
- 供え物と焼香:
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故人の好物だった食べ物、果物、お酒などを墓前に供えます。あの世のお金を模した紙などを焼いて送る習慣もあります。
- 近年は環境配慮から火気の使用を禁止し「文明祭祀(スマートで文明的なお参り)」を政府が強く推奨しています。
- 礼拝:
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家族全員で墓前に整列し、線香を上げ、拝礼をします。先祖への感謝と追悼の念を捧げ、家族の平安や繁栄を祈ります
- 花を捧げる:
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現代では、環境や安全面から、生花(特に菊が一般的)を供える人が増えています。
- 「掛紙」:
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黄色や白色の長方形の紙を石で墓の上に押さえつける習わしもあります。これは「この墓には祭祀する者がいる」という印と言われます。
現代では、特に都会に住む人や遠方の人は、「オンライン祭祀」という選択肢も増えています。
専用サイトで仮想の花や供え物を捧げ、追悼のメッセージを残すことができます。
習慣(2)春の生命力を楽しむ「踏青」
先祖をしのぶ厳かな時を過ごした後は、外に出て春の自然を満喫します。
これが「踏青(tàqīng)」です。


- 春のピクニック:
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家族や友人と郊外や公園に出かけ、青々とした草の上で食事を楽しみます。
- 凧揚げ:
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清明節の代表的な遊びです。高い空に色とりどりの凧を揚げることは、縁起が良いとされ、災いを遠ざける意味もあると言われます。
- 自然の中を散策:
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柳の若芽が芽吹き、花が咲き乱れる景色の中を歩き、生命の息吹を感じます。
- 柳の枝を飾る:
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頭に柳の枝を挿したり、家の戸口に吊るしたりします。柳には邪気を払う力があると信じられてきました。
- 伝統的なゲーム:
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蹴鞠と言われる古代サッカーやブランコなど、古くから伝わる春の遊びを楽しむこともあります。
習慣(3)清明節ならではの伝統食
清明節の食べ物は地域によって習慣が違いますが、寒食節の名残りや、春の食材を楽しみます。


- 青団(青团 qīngtuán):
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最も代表的な清明節の食べ物です。
ヨモギなどの草汁で練ったもち米皮に、小豆餡や卵黄の塩漬け、肉でんぶなどを包んで蒸したもので、日本の「草餅」に似ています。 - 潤餅(润饼 rùnbǐng):
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薄いクレープのような皮で、様々な春野菜や肉の具を包んで食べます。特に福建、台湾地域で盛んです。
- 饊子(馓子 sǎnzi):
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小麦粉を細くねじって揚げた、サクサクとしたお菓子。もとは寒食節に火を使わずに食べられる保存食でした。
- 清明螺(qīngmíng luó):
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タニシ料理です。「清明時のタニシは、ガチョウに匹敵する」と言われるほど美味とされ、この時期に食べる風習があります。
- 卵料理:
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ゆで卵や塩漬け卵を食べ、健康と平安を祈ります。子供たちが卵同士をぶつけ合って遊ぶ習慣がある地域もあります。
他にも各地様々な伝統食がありますが、いずれも健康や円満などを象徴しています。
どうして「追悼」と「行楽」が同じ日に?


清明節は、先祖をしのぶ厳粛なお墓参りと、春を楽しむ明るい行楽が一緒になっている、世界でも珍しい節日です。
日本人には少し不思議に感じられるかもしれませんが、この組み合わせには中国ならではの考え方が深く関係しています。
理由(1)中国では「命が続いていくこと」を重んじてきた
中国文化では、古くから「命は代々つながり、受け継がれていくもの」という考えが大切にされてきました。
そのため清明節では、2つの思いを一緒に行うことが、ごく自然な流れとされてきたのです。
- 先祖に感謝し、家族のルーツを確かめる
- 春の自然を味わい、いま生きている命に感謝する
追悼と行楽は正反対ではなく、「命を敬い、前へ進む力を得るためのセット」 という感覚に近いものです。
理由(2)悲しみを抱えつつも、前向きに生きるための知恵
清明節のもう1つの特徴は、気持ちの切り替えを大切にする文化があることです。
お墓参りをして静かに先祖へ手を合わせたあと、明るい春の景色の中へ出かけることで、心のバランスを取り戻す時間になります。
- 気持ちを整える
- 家族で語らい、心を軽くする
- 新しい季節を前向きに迎える
この過ごし方は古代から続く生活の知恵であり、「悲しみだけにとどまらず、今日を大切に生きる」という前向きな姿勢が清明節には込められているのです。
清明節をテーマにした中国語を覚えよう!


清明節には、この時期ならではの挨拶や詩から生まれた表現があります。
ここでは、日常会話でも目にしやすい基本語彙に加えて、清明節特有の言葉も一緒に覚えてみましょう。
清明節によく使う基本語彙
まずは、記事中にも出てきた清明節に関する単語を確認しましょう。


清明節のあいさつ
- 清明安康(qīngmíng ānkāng)
- 祝你清明安康(zhù nǐ qīngmíng ānkāng)
清明節の時期に使われる挨拶で、「平和で健やかに過ごせますように」という意味です。
「祝你」をつけるとより丁寧で相手への配慮が感じられます。
清明節は先祖をしのぶ日であるため、中国では一般的に「清明节快乐(清明節おめでとう/楽しく過ごしてね)」とは言いません。
「快乐(楽しい・ハッピー)」はお祝いのニュアンスが強く、追悼の日にはふさわしくないと考えられているからです。
そのため、清明節には「安康(平安と健康)」や「顺遂(すこやかに過ごす)」などの、落ち着いた気持ちを表す言葉 が選ばれます。
SNSでも、家族や友人に向けて「清明安康」と送るのがもっとも自然で丁寧な表現です。
杜牧の漢詩『清明』の解説と鑑賞
中国人と清明節の話をする際、唐代の詩人・杜牧(とぼく)の『清明』を知っていると、「教養がある人だ」と一目置かれます。


【日本語の意訳】
清明のころには雨がしとしと降り、
旅人の心は沈む
「どこか酒を飲める店はありませんか」と尋ねると、
牧童が遠くの杏(あんず)の花咲く村を指さして教えてくれた。
この詩は冒頭の「清明时节雨纷纷(清明のころは雨がしとしと降る)」が非常に有名で、清明節のしっとりした雰囲気を象徴する表現として、現代でもよく引用されます。
ぜひ覚えて言ってみましょう。
2026年中国の祝日一覧


最後に中国国務院が公式に発表した2026年の祝日スケジュールを紹介します。


中国では、「调休」と呼ばれる振替出勤制度があり、連休をつくるために前後の週末が出勤日になることがあります。
さらに、春節や国慶節の大型連休は帰省や旅行のピークで、国内外へ移動する人が一気に増えるため、交通機関や観光地がとても混雑します。
このように中国の祝日は、昔からの伝統行事を大切にしながら、現代的な休暇スタイルも取り入れた仕組みになっています。



文化・生活リズム・家族観が反映されている点が、中国の祝日の大きな特徴といえるでしょう。
まとめ


清明節は、古くから続く火の風習や寒食節の伝説、そして春の節気「清明」が重なって生まれた、中国ならではの伝統行事です。
いちばん大切にされているのは、やはりお墓参りです。
家族で集まり、先祖に感謝を伝える日でもあります。
最近では、遠方に住んでいる人を中心に、オンラインお墓参りという新しいスタイルも登場しています。
また、環境への意識が高まるにつれ、紙のお金を燃やすといった昔ながらの供養方法は、控えめになってきました。
もう1つ、清明節の頃は春の気候が気持ちいいこともあり、ピクニックや散策を楽しむ人もたくさんいます。
追悼と行楽が自然につながっているのは、清明節ならではの特徴ですね。
清明節は、先祖を敬いながら、これからを前向きに生きていく力をくれる節日です。



中国の知人・友人にぜひ「清明安康」と声をかけてみてください。きっと喜んでくれますよ。
中国語を勉強している方は、ぜひ毎日中国語 公式LINE の学習情報も活用してみてくださいね。




