【中国語】広東語と北京語、標準語の違いは？発音・文法・使用地域を比較

実は広東語も北京語も中国語の方言の1つです。

中国は方言がたくさんあり、相互理解が難しいため「普通話」と呼ばれる標準中国語が定められています。

それでは、広東語や北京語は標準中国語とどのくらい違うのでしょうか？

この記事では、特に広東語と標準中国語の違いに焦点を当て、使用地域や話者数、発音や文法の代表的な違いを解説します。

あなたの学習目的にふさわしい言語を選択し、将来に向かって第一歩を踏み出しましょう！

広東語・北京語と標準中国語の関係

この章では、広東語・北京語と標準中国語（普通話）の基本的な関係性を解説します。

• 広東語と標準中国語（普通話・マンダリン）の正確な関係
• 北京語と標準中国語（普通話・マンダリン）の違いと共通点

広東語と標準語中国語（普通話）の関係

広東語は中国語の多様な方言の1つです。

広東語と標準中国語（普通話）は違いが大きく、広東語を知らない人にはほとんど通じません。

中国語には大きく分けて七大方言が存在し、その中で広東語は「粤語（えつご）」に属する重要な方言です。

広州だけでなく香港、マカオ、さらにマレーシア、シンガポールの華人、そして世界各地の華僑・華人コミュニティの一部にも多くの話者がいて、話者人口は8000万人以上と推定されています。

広東語は英語や標準中国語に比べると話者数が少ないものの、香港・マカオの経済的影響力から、その国際的な地位は非常に高いと言えます。

北京語とマンダリンとの関係性

標準中国語（普通話・マンダリン）は、北京語の発音と北方方言の語彙をベースとしています。

標準中国語（普通話）のことを指して北京語と言われることもありますが、厳密には正しくありません。

北京語は方言の1つで、例えて言うならば日本の東京弁と標準語のような関係があります。

北京語は標準中国語より「儿化音」が多いのが特徴です。

ちなみに、「マンダリン」という呼称は、17世紀に華南地域を訪れたキリスト教宣教師が、官僚（官吏）の言葉を指して使い始めたのが語源とされています。

中国語教室や大学の第二言語で学ぶ中国語は一般的にこの標準中国語（普通話）で、書店で販売されている教材も特別な記載がない限り標準中国語のものです。

標準中国語は中国本土の広範囲で通用するので、特定の地域の言語を学ぶ理由がなければ、まずは標準中国語から始めるのが良いでしょう。

広東語と中国標準語（普通話）の具体的な違い

この章では、広東語と中国標準語（普通話）の具体的な言語的差異を以下の点から詳しく解説します。

• 発音と声調の違い
• 語彙と表現の違い
• 文法構造の違い
• 使用文字の違い

違い（1）発音と声調

中国語の発音は日本人にとって難しいですが、広東語の発音はさらに難しさが増します。

違い	普通話	広東語
声調	4つ（+軽声）	6つ（細かく分けると9つ）
-p, -t, -kで終わる音	ない	ある
-ngで始まる音	ない	ある
そり舌音	ある	ない
発音の響き	なめらか	破裂音があり跳ねるような感じ

まず、標準中国語（普通話）と広東語の大きな違いは声調です。

普通話では4つなのに対して、広東語では6つ（細かく分けると9つ）もあります。

さらに標準中国語にはない入声（語末の子音 -p, -t, -k）や、特定の母音・子音の組み合わせが習得に時間を要する要因となります。

一方、標準中国語（普通話）の発音は体系的に整理されており、ピンインという発音表記システムが確立されているため、学びやすい構造です。

将来の実用性を考慮すると、標準中国語の方が体系的に学習しやすいという利点があります。

特に日本人学習者には、標準中国語の方が発音習得の難易度が低いとされています。

違い（2）語彙と表現

広東語と標準中国語は、語彙や日常表現において大きな違いがあります。

例えば「ありがとう」は標準中国語で「谢谢（xiè xie）」ですが、広東語では「唔該（m4 goi1）」または「多謝（do1 ze6）」と表現します。

また、数字の言い方も異なり、特に桁の大きい数字では表現方法が変わる点も特徴です。

日常会話やビジネスシーンで頻繁に使われる表現も両言語で異なることが多く、同じ漢字を使用していても発音や意味が全く違うケースも少なくありません。

特に広東語は香港映画やカンフー映画の影響で独特の俗語や表現が多く、現地の文化やユーモアを深く理解するには専門的な学習が必要です。

さらに、同じ広東語でも地域による方言差も見られます。

幅広い地域でのビジネスコミュニケーションには標準中国語の習得が有利と言えるでしょう。

違い（3）文法構造

広東語と標準中国語は基本的な文法構造は似ていますが、細部で多くの違いがあります。

項目	広東語	普通話
語順	おおむね同じ
助詞	多い・複雑	少なめ・規則的
時制表現	「咗」「緊」「會」など	「了」「着」「会」など
否定形	「唔」「冇」「未」など	「不」「没」「还没」など
疑問文	文末に「咩」「呀」「呀嘛」などを付ける	「吗」などの助詞を使う、語順変化
所有の表現	「我嘅書」	「我的书」
比較構文	「佢高過我」	「他比我高」
受け身構文	「畀人打」	「被人打」

例えば、広東語では動詞の後に助詞「緊」を付けて進行形を表しますが、標準中国語では「在」を動詞の前に置きます。

疑問文や時制の表現、比較、受け身も作り方が異なります。

また、広東語は標準中国語より文末助詞が豊富で感情やニュアンスの表現が細かいのが特徴です。

学習効率を考えると、標準中国語の文法は体系的に整理されており教材も充実しているため、初心者にとって取り組みやすいといえます。

特に短期間で基本的なコミュニケーションを習得したい場合は標準中国語が良いでしょう。

違い（4）使用文字

中国標準語と広東語は、それぞれ異なる文字体系で表記されることが一般的です。

中国標準語は主に「簡体字（かんたいじ）」を使用するのに対し、広東語が話される香港・マカオでは「繁体字（はんたいじ）」が用いられます。

ただし、中国本土の広東省では、広東語の会話内容を記述する場合でも、一般的に簡体字が使用されます。

さらに、広東語には口語表現独特の漢字も多く存在し、話し言葉と書き言葉の違いが大きいのも特徴の1つです。

◾️広東語独自の漢字例：

漢字	発音	意味・使い方
咩	me1	なに？（what）
嘅	ge3	的（所有格や修飾）
嚟	lai4	来（來）の口語形
冇	mou5	無い（没有）
哋	dei6	～たち（複数の助詞）
吖	aa3	語尾助詞（ね？、よ？）
啲	di1	少し（少しの意味）
喺	hai2	～にいる、～にある（在）
唔	m4	否定（不）

広東語と中国標準語の使用地域

この章では、広東語と中国標準語（普通話）がそれぞれどの地域で使われているのか、その地理的・人口統計的情報を紹介します。

以下のポイントを把握しておきましょう。

• 中国標準語の主な使用地域と話者人口規模
• 広東語が主流となる香港・マカオ・広東省の市場特性

中国標準語の使用地域と人口

中国標準語は、第一言語として約9.9億人、第二言語も含めると約11.84億人が使用する世界有数の話者人口を誇る言語です。

出典：What is the most spoken language? | Ethnologue Free（2025年）

中国本土では、ビジネス・教育・公式文書・放送などの広範囲で共通語として機能しています。

また、中国本土にとどまらず、台湾では「国語」として、シンガポールでは「華語」としてそれぞれ公用語に指定され、日常生活から教育、政府機関まで幅広く使用されています。

さらに、マレーシアやインドネシア、タイなどの華人社会、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの海外華僑コミュニティでも、中国標準語は重要なコミュニケーション手段として浸透しています。

広東語が使われる地域（香港・マカオ・広東省）

広東語は、8000万人以上が使用すると推定されており、香港・マカオでは公用語、広東省では主要な地域言語として、その経済的影響力が話者人口を大きく上回る重要な言語です。

特に、香港は1人当たりのGDPが高く、国際金融・貿易の重要な位置として機能しているため、広東語の経済的価値は話者人口の規模以上に評価されています。

香港の銀行や投資会社では、英語と広東語が実質的な業務言語として併用されることが多く、クライアントとの信頼関係構築には広東語が重要な役割を果たします。

広東省の広州においても、ローカルビジネスや伝統的な商取引では広東語が依然として主流であり、現地企業との深い関係を築く上では広東語スキルが有効に機能するでしょう。

中国語学習者のための言語選択ガイド

この章では、これから中国語を始める方が広東語と標準中国語のどちらを学ぶべきか、その判断基準を紹介します。

重要なポイントは以下の2点です。

• 主な活動地域に基づく言語選択
• 言語習得に必要な時間と費用

選択基準（1）ビジネス目的と活動地域

言語選択の最も重要な基準は、あなたの主な活動地域とビジネス目的です。

中国本土（北京、上海、深圳など）でのビジネスが中心であれば、標準中国語（普通話）を選びましょう。

中国本土ではビジネスの場で標準中国語が広く使用されています。

一方、香港やマカオ、広東省での活動が中心であれば、広東語の習得が有利です。

特に香港では、ビジネスの場でも広東語が広く使われています。

両地域を頻繁に行き来する場合は、まず標準中国語を基礎として習得し、その後広東語を学ぶという段階的アプローチが効果的です。

標準中国語は中国全土、シンガポール、マレーシアなど幅広い地域で通用しますが、広東語は香港、マカオ、広東省、海外華僑コミュニティなど利用場面が限られています。

取引先の主要言語や商談で使用される言語を事前に確認することも重要です。

選択基準（2）習得難易度と必要時間

日本人にとって、一般的に広東語の方が標準中国語より習得難易度が上がります。

標準中国語は体系的な学習方法が確立されており、発音もピンインという発音表記システムで整理されているため比較的取り組みやすいと言えます。

HSK（中国語の試験）の基準によれば、日常会話（HSK4級程度）の習得には第二外国語で2年の学習が必要とされています。

早い人では1年未満で到達する人もいます。

一方、広東語は声調が複雑で、標準化された学習システムや教材が少ないため、習得に時間がかかります。

費用面では、標準中国語の学習教材やオンラインコースは豊富で、月額数千円程度から始められますが、広東語は専門的な教材が限られており、マンツーマンレッスンで月額2〜3万円程度かかる場合があります。

時間効率と実用性を重視するなら、まず標準中国語を習得し、必要に応じて広東語を追加学習するのが現実的なアプローチです。

まとめ

広東語や北京語は中国語の方言の1つです。

標準中国語（普通話）は北京の発音と北方方言の語彙をベースとしており、北京語と共通する部分も多くあります。

広東語は主に香港・マカオや広東省で使用されていますが、標準中国語（普通話）とは発音や語彙、表現の面で大きな違いがあります。

これから主に中国本土での活動を拠点とする場合は標準中国語（普通話）を、香港・マカオを中心に活動する場合は広東語を学習するのが適しています。

しかし、広東語は口語も多く、学習できる場所や教材が限られているため、日本人にとっての学習ハードルは高くなります。

どちらの地域にも携わる場合は、先に標準中国語（普通話）を学習して、その後広東語を追加するのが現実的で有効的な方法です。

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